
プロまもの使いの朝は早い。
まだ夜も明けきらぬ内から、質素な仮宿を後にしエモノを狙う。

「何故こんな早朝に?」

「夜に動くまものも多くてね。あいつらの生活に合わせていたら、自然とこの時間に動くようになっただけさ」
そう笑う彼女の眼には、経験に裏打ちされた深い自信が見えた。

「今、ラギ雪原に来ていますが、ここにはスカウトできるまものはいないのでは?」

「まものなんて何処にでもいるさ。お前さんが言っているのはスカウト書の事だろう?」
話ながらも、準備の手は休めない。
染み付いた動作は淀みなく、雪原を踏破するための資材が纏められていく。

「スカウト書ってのはな、私らプロまもの使いが纏めたノウハウ集みたいなもんさ。アレに頼ってるようじゃまだまだヒヨッコだよ」

「なるほど。では、プロはスカウト書は使わないのですね?」

「もちろんさ。 ……もっとも、スカウト書を使うのは恥ずかしいことじゃない。そうやって後世に技術を残すのも、私らの大事な役目だからね」
「先人の知恵は、いつだってありがたいもんさ」
そう言いながら渡されたのは、ボロボロに読み込まれたホイミスライムのスカウト書。
彼女もまた、蓄積されたスカウト技術の線上を歩んでいるのだ。


「今回、狙うのはアイツだよ」
我々の目の前には、ラギ雪原の固有種 せつげんりゅう がいた。
いまだスカウトの報告はなく、もし彼女がスカウトに成功したならば歴史的な瞬間である。
我々は、新たなスカウト書の誕生に立ち会うことが出来るかもしれない。
彼女は、後を追おうとする我々をそっと押しとどめ、身体ひとつで巨大なまものの前へと向かう。

激しく威嚇を繰り返すせつげんりゅう、それに対し、彼女は受け流すようにゆっくりと歩を進める。

すっかり夜も明け、東の空が白々とし始めた頃、不意にせつげんりゅうの動きが止まった。
そして、こうべを垂れながら親しげに彼女の側に体を寄せる。
今までに見せなかった動きだ。
決着の時が近いのを素人ながらに肌で感じる。
と、次の瞬間!!
頭からマルカジリされた。続きを読む
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